2020.05.13

シベリアのイエス

ロシアには「シベリアのイエス」と呼ばれる教祖がいる。全世界に信者が存在し、その数5,000人に及ぶとされている。うち2,000人くらいの信者がロシア極東のペトロパブロフカで村を形成し共同で生活を営んでいる。

教祖の名はヴィサリオン(本名セルゲイ・トロップ)。彼は元々シベリアのミヌシンスクで交通警察官をしていたが、ソビエト崩壊直前の1989年に失業してしまった。

ところが、職を失ったある日、神からのお告げを受けたことによって覚醒した。この頃、ソビエトではこれまでの無神論が揺れ始め、多数の新興宗教が誕生していた時期だった。

画像引用元:「WIRED」より

Feelフィール
ソビエトはそもそも無神論

かのボリイェヴィキの指導者で後の最高指導者になったウラジミール・レーニンが、同じ組織のメンバーであるマクシム・ゴーリキー宛に「いかなる神を信仰することは死体愛好主義である。」という内容を記した手紙を送っている。

その後、十月革命により共産党政権が誕生したことを機に、正教会を弾圧していった。聖職者の選挙権剥奪し、聖堂や修道院は閉鎖という結果になった。

しかし、レーニンが亡くなり、新たな指導者ヨセフ・スターリンに変わると正教会を再び合法化した。これはアメリカから信仰の自由を認めないと、戦争における経済及び軍事的な支援を撤回するとの要請を受けたことによるものだった。

そして、時代は変わりに変わってミハイル・ゴルバチョフによるペレストロイカで、1991年に政府は信仰の自由における新たな法を成立させた。

AMUSE(アムス)
救世主現る

1990年に設立された教団の正式名称は「Church of Last Testament」(終約聖書の教会)。教祖と信者は、クラスノヤルスク地方にある小さな村ペトロパブロフカで、教団初の教会を立てた。以後、信者はこの地で共同生活を送っている。

村の様子は終始穏やかで、他人に教えを押し付けて勧誘することも一切ない。あくまでも、教団内で助け合って生活しているのである。世界の終末を待つかのように。

また、村は教祖が住む「神の住処」、信者達が住む「人々の住処」、「教会の峠」に分けられており、日曜日になると教祖は「人々の住処」で教えを説く集会が催されている。

2009年8月31日のAFPによると、記者がどのようにして自分が神の子キリストだと悟ったのか質問を投げかけた。すると、ヴィサリオンは膝に手を置き「興味深くも、非常に複雑な出来事でした。自分自身の内部から、それまで抑えつけられていた激しい何かがこみ上げてくるのを感じたのです」と答えた。

また、この村では教祖の教えを忠実に守るべく、完全菜食主義を取っている。勿論、お酒やたばこも禁止となっている。そして、この村には学校や職業訓練所、商店や菜園など、完璧な社会が形成されている。村の若者は大工を筆頭に、手に職をつけるために職業訓練所に通っている。その信者たちが建てる家屋は独特なデザインで密かに人気を博している。

時代の節目において、宗教の信仰は切っても切り離せない。人々が混沌とした世の中で、救世主を探すのは歴史の性だ。このヴィサリオンも例外ではない。

参考

AFP

WIRED

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